日本政府は、釜山の日本総領事館前の歩道に旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する少女像が設置されたことへの対抗措置として、長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・在釜山総領事を一時帰国させる方針を決めた。菅義偉官房長官が1月6日の定例会見で発表した。
日本政府は、駐韓大使らの一時帰国のほか、韓日通貨スワップ協定の再開に向けた交渉の中断や、韓日ハイレベル経済協議の延期などを発表した。このような措置に対して、 麻生太郎財務相も6日の閣議後の会見で、日本政府が協議の中断を表明した日韓通貨スワップに関し、「信頼関係を作った上でやらないとなかなか安定しない」との見解を示した。
釜山の日本総領事館前の少女像は昨年2016年末に市民団体が設置した。管轄自治体の釜山市東区は、昨年12月28日に市民団体が少女像を仮設置した際には強制的に撤去したが、世論の激しい反発を受けて2日後の30日に一転して「市民団体が設置するのを妨げない」と設置を事実上認めた。
このような韓国内の少女像設置に動きに関して、日本政府の対応は、「不可逆的な措置」として2015年12月28日に日韓合意をもって日本が慰安婦問題に対する「責任を痛感」し「元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復のために」10億円を捻出した件に関して、韓国政府がそれを受け入れ、韓国内に「和解・癒し財団」を発足させ、30人以上の元慰安婦がすでに慰労金を受け取ったという事実などで、韓国政府が少女像を撤去しないのは日韓合意違反という主張である。韓国政府は、2015年末の日韓合意には「少女像の撤去は含まれていない」としており、今回の日本政府の対応を遺憾とする声明を外務部の報道官を通して出している。
日本側はこのまま行けば、日韓合意を破棄すると公約している大統領候補が韓国の次期大統領に当選した場合、日韓合意が実際に破棄される場合があると見て、今回のような強硬措置をとったものと見られる。韓国の少女像設置に対する日本内の反発もあるために、日本政府としても何らかの措置を取らねば安倍政権が批判される立場になったための措置ともいえる。
さらに米国のトランプ次期大統領が、米国のトヨタ自動車がメキシコ内に米国向けの自動車製造工場を建設したことに関して、その工場を稼働すればトヨタ自動車に報復関税を課すという強硬発言をした後に、日本政府は米国を見習って、韓国に強硬発言をしている。これは米国に対しては何もできない日本政府が、韓国に対しては圧力をかけることを日本の国民に誇示しつつ、外交的に批判される状態から抜け出そうという姿勢をとった結果でもある。日本は昔から、強い相手には下出に出て、弱い相手には圧力をかけるという、いじめ外交を得意としてきた。1858年に不平等条約である通商修好条約を米国やロシアなどと結んだ日本は、韓国に同様の不平等条約である日朝修好条規、いわゆる江華島条約を強制した。
それは、朝鮮侵略論者だった吉田松陰が「米ロで失ったものは、アジアの弱小国から取り戻せ」と唱えたことを当時の明治政府が忠実に実行した結果であった。当時から「弱い者いじめ外交」は日本の得意技である。韓国はそういう日本の本質を見抜かなければならない。
もともと日韓合意の中に少女像の移転が明記されたわけでもないし、同意文章自体がない。だから韓国側としては、原則的にはいくらでも同意をひっくり返すことができるだろう。しかし、日韓合意を世界のテレビカメラの前で公表しているために、簡単に破棄できるものでもない。一番重要なのは、韓国政府がいち早く現在の混乱状態を整理し、力強くて賢い全方位外交を構築することである。